タイムカプセル。
「これくらいで良いかな?」
「大丈夫だろ」
30センチ程掘った穴の横にクッキーの缶箱を置いた。
「じゃあ入れよっか」
「杏は何持ってきたの?」
「お揃いで買ったリストバンドと体育祭で交換したハチマキと数枚の写真と自分への手紙と祐之介への手紙。祐之介は?」
「俺は杏がくれた勉学のお守りと県大会で優勝した時に千切れたお揃いのミサンガと自分へのと杏への手紙」
「じゃあ…入れよっか」
「うん」
缶箱に一つずつ入れ、全部入れると蓋を閉め、念の為にガムテープで封をした。
そして、穴の中に缶箱をソッと入れた。
「埋めるか」
「うん」
掘った土をまた穴に戻す。
全てが終わった時には空がオレンジ色になり始めていた。
そんな空を2人で眺めていると、我慢していた気持ちが少しずつ漏れ始めた。
「…実はね、タイムカプセル入れようって言ったのは未来の保証が欲しかったんだ」
「保証?」
「うん…これから私たち学校別々になるでしょ?
だから今みたいに喧嘩しても仲直りするのに時間が掛かっちゃうかもしれないし、会えない時間も増えると思うし、不安にもなると思う」
「……杏」
「だけどね!このタイムカプセルを一緒に掘るって未来の約束があれば些細な事で別れる事もないと思えるの」
「…だから未来の保証」
「うん」
目頭が熱くなってポロポロと涙が目から溢れた。
「杏たち……別れないよね?」
「杏、俺たちなら大丈夫だよ。
きっと3年後の高校の卒業式、この公園で待ち合わせして別々の制服を着た俺たちが笑ってタイムカプセル掘ってるよ」
「…う……ん」
祐之介が自分のセーターで涙を拭ってくれると、ちいさな声で“不安にさせてごめん”と呟いた。
さっきは泣くなよとか言ってたのに…。
そんな祐之介に涙が溢れて声が出ない杏は頭を横に振って応えた。