俺様外科医と偽装結婚いたします

似ている眼差し



「ありがとうございました!」


カランカランと軽やかに響いたドアベルの音に顔を上げ、私は店から出ていくお客へと大きく声をかけた。

もうすぐ午後三時になろうとしている。忙しさや賑やかさのピークはとっくに過ぎ、店内はのんびりとした空気に満ちている。


「お待たせしました」


テーブル席に座っている子供連れのママさんふたりの元へとチョコレートカップケーキを置くと、嬉しそうな子供たちの声が返って来て、私も自然と笑みを浮かべた。


「今のうちに、私も一息つくとしようか」


カウンター席によいしょと腰掛けたエプロン姿のお祖母ちゃんが、「コーヒー」と一言寄越してきた。

それに対して、私が「はいはい」と素っ気なく返事をしたのが気に入らなかったらしく、お祖母ちゃんが「まったく」と不満たっぷりに呟いた。


「いつまで不機嫌でいるんだい? そんな態度じゃあ、折角来てくださったお客様に申し訳ない。何があったのか知らないけれど、仕事中は愛想よくしなさい」


祖母の小言に思わずムッとしてしまう。今のは相手が自分の身内だったため、素で答えてしまっただけで、お客様相手にそんな態度をとったりなどしていない。

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