俺様外科医と偽装結婚いたします
次に彼と会った時、私だけがあたふたしてしまいそうで恥ずかしい。
のぼせ気味の頭でそんなことを考えていたけれど、今更ながらある事実に突き当たって急に不安になる。
私たちに次はあるのだろうか。
帰りの車の中でも、会いたいという私の言葉に対する明確な返事はもらえていない。
けれどだからといって、胸の中にある彼とデートがしたいという甘い欲求をかき消すことも難しい。
電話してみよう。緊張するけれど、環さんとの繋がりを維持するために私に残されている手段はそれだけだ。
心を決めて、河川敷に続く階段を一気に駆け下りていく。
この道を走るたび、環さんとの出会いを思い出す。
あの時は私をストーカー呼ばわりしてプライドを傷つけるような態度もとったくせに、昨日の環さんは違った。
私を貶めるような発言は許さないって、守ってくれた。それが本当に嬉しかったから、初対面での無礼は許してあげることにする。
しょうがないなと笑みを浮かべた時、となりに誰かが並んだ。
「気持ち悪いって自覚はあるか? その笑みは朝の爽やかさにそぐわないからやめろ」
「たっ。環さん!?」