俺様外科医と偽装結婚いたします
お祖母ちゃんに窓際の空いている席へと案内された銀之助さんは、静かに腰を下ろして息を吐いた。
そしてテーブル脇からお祖母ちゃんに顔をのぞき込まれ、わずかに目を大きくさせる。
「なんだい? お疲れかい?」
「梅子(うめこ)さんのように毎日元気でありたいと思っていますが、年には勝てませんね」
朗らかな表情に戻った銀之助さんが、そんなことを言ってふふふと笑った。
梅子さんとはお祖母ちゃんのことである。
銀之助さんの言う通り、確かに家族の誰よりもお祖母ちゃんが一番はつらつとした毎日を送っている。
私、今井(いまい)咲良の家族は全部で五人。お祖母ちゃんに両親、そして私に三才年下の弟だ。
父は会社勤めをしているため、お店のことに口を出さない。
一方、ご近所へとカツサンドを配達しに行ったきりなかなか戻ってこない母はこのお店で働いており、元々おっとりとした性格だからか、お祖母ちゃんと衝突することは滅多にない。
私は大学卒業後、それなりに有名な企業に就職したのだけれど……人間関係に疲れ退職してしまい、そのあとコスモスで働き始めてもうすぐ一年になろうとしている。