俺様外科医と偽装結婚いたします
「……お祖母ちゃん?」
苦しげに胸元を抑えた格好のまま、お祖母ちゃんがその場にかくりと両膝をついた。
私は驚きと戸惑いで足がすくみ、すぐに動く事ができなかった。
「ど、どうしたの? ……ねぇ、しっかりして!」
震える声で言葉をかけると、お祖母ちゃんがわずかに顔を上げる。
「……大丈夫、なんでもない……から」
気にするなとでも言わんばかりに手の平を向けてきたけれど、その手はすぐに胸元へと戻り、さらに身体が崩折れていく。
そこでやっと足が動いた。私は一足飛びにお祖母ちゃんの元まで行ってしゃがみこみ、支えるように手を伸ばす。
「お祖母ちゃん!」
表情は和らがない。頭の中が真っ白になりどうしたら良いのかも思いつかず、動揺ばかりが心を占めていく。
「しっかりして」と繰り返し声がけすることしかできないまま、突然のこの状況に私までパニックに陥ってしまう。
どうしよう。どうすればいいの? 誰か、助けて……。
助けを求めるべく周囲の人影を探したその時、バタンッと車のドアがしまる音を耳が拾った。
そして公園入り口から走り寄ってくる姿を視界に捉え、涙がにじむ。
「咲良!」
「……環さん」