俺様外科医と偽装結婚いたします
お祖母ちゃんは大丈夫なのか。環さんにそう問いかけようとしても、うまく声が出てこなかった。
動揺ですっかり心が萎縮してしまっていた私に、環さんが微笑みかけてきた。
「大丈夫。俺がついている」
力強く響いた言葉に、また涙がこぼれ落ちていく。言葉を返せないまま、こくこくと頷き返した。
環さんの車で、私はお祖母ちゃんとともに自宅に戻ってきた。
お祖母ちゃんの部屋で布団の準備を整えてから急いで廊下に出ると、ちょうどリビングから母が出てきた。
「環さんにまで心配掛けさせちゃったわね。あとで店に来るように言ってちょうだい。なにか食べていってもらうから」
リビングのドアを振り返り見ながら、母が申し訳なさそうに話しかけてくる。
「……年なのに、無理させすぎちゃったかしら。最近店が忙しかったものね」
ため息混じりに続いた嘆きに、私は視線を伏せた。
体力的なことだけじゃない。より問題だったのは、私がお祖母ちゃんにとって心配の種となっていたことだ。
私が爆発して声を荒げたのと同じように、お祖母ちゃんもまた私の言葉で心の重りに耐えきれなくなってしまったのならば……ちゃんと謝りたい。