俺様外科医と偽装結婚いたします
「お店の方は何とかするから、明日お祖母ちゃんを加見里病院に連れて行ってちょうだい。詳しい話は環さんから聞いて」
「……えっ……環さんに?」
「あぁ本当に頼りになるわ」
私の動揺には気付かずに、お母さんはパタパタと足音を鳴らしながら店の方へと行ってしまった。
環さんはまだお祖母ちゃんに付き添ってくれている。「もう平気だよ」と頑なに言い張り、店に戻ろうとするお祖母ちゃんをリビングに留めてくれているのだ。
お祖母ちゃんは仕事人間だ。こんな時でさえ、私たち家族がいくら止めても言うことを聞かずに店に立っていたことだろう。
けれど環さんが相手となると別だった。
医者としての風格を漂わせて、甘さなど微塵も見せずにハッキリと制止されたため、さすがのお祖母ちゃんもわがままを突き通す事ができなかったのだ。
すぐにでも身体を休ませられるようにと私がお祖母ちゃんの布団を敷きにいったのも、帰宅早々環さんに指示を受けたからこそ。
お母さんと同意見だ。環さんは本当に頼りになる。そして、医者の顔でお祖母ちゃんと向き合っている姿はとても凛々しくて、惚れ直しそうになる自分がいる。
『大丈夫。俺がついている』