俺様外科医と偽装結婚いたします
しかしそこで一つだけ、銀之助さんとあいつに共通点があることに気がついた。すこぶる顔が良いという点だ。
あいつに対しては腹が立っているのにも関わらず、ドキリとさせられてしまったくらいだし、銀之助さんも常連さんの間で素敵な男性として認知されている。
ただ物ではないような、そんな力強さをふたりの眼差しから感じ取ることができる。
だからあいつを思い出してしまったに違いないと強引に自分を納得させ、私は足早に銀之助さんの元へ戻った。
とは言え仏の心を持つ銀之助さんとあいつと重ねて見てしまったことは、申し訳なさすぎて胸が痛い。
改めて謝罪の言葉を口にしながら、カップに付着しているコーヒーを布巾で手早く拭き取った。
ソーサーを取り替えようとした時、隣のテーブル席にいた男性が席を立った。お会計の意思を伝えるような視線を送ってきて、私はその場をお祖母ちゃんに任せてレジに向かう。
しかし銀之助さんの目元がやっぱり気になってしまいちらちら視線を向けていると、本人にそれを気付かれ、何度目かでしっかり目が合ってしまい、ふたりで苦笑いを浮かべ合うこととなる。