俺様外科医と偽装結婚いたします

感謝しながら、銀之助さんのことを思い浮かべた。

今度いつ会えるだろうか。話をお受けすることを本人に直接伝えられるだろうか。

それともお祖母ちゃんに小言を言われるのが先で、うんざりしながら会いますと言うことになるのだろうか。

出来れば銀之助さんに言いたいと、思いを強くさせながら緩い坂道を降りていく。

しかし公園の横を通り過ぎようとした時、視界に入ってきたその姿に私は慌ててブレーキをかけた。

急いで公園入口に自転車を止めて、鉄棒の下で蹲っている見覚えのある姿へと走り寄る。


「大丈夫ですか? 銀之助さん!」


地面に膝をつき、戸惑いながら丸まっている背中に手を添えつつ、焦り気味にその名を口にした。


「あぁ、咲良さん。お恥ずかしい姿を……いてて……見せてしまいましたね……張り切ってストレッチをしようとしたら、腰が……でも大丈夫です」


勤めて明るく説明してくれるけれど、時々痛みで顔を歪ませるため、私には全く大丈夫に見えなかった。


「どうしたら……そうだ! 陸翔を呼びましょうか? 車でそのまま病院に」

「ありがとうございます。でも、ちょうど電話中だったもので……その相手がこれから迎えに来てくれると」


< 33 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop