俺様外科医と偽装結婚いたします
「咲良さん、こんな時になんですが……この前の話を改めてさせていただけませんか?」
真剣な眼差しを向けられ、どきりと鼓動が高鳴り、身体も強張っていく。
「この前って、銀之助さんのお孫さんを紹介してもらうっていう話ですよね?」
「えぇその通りです。あれから梅子さんと話はしましたが、咲良さんとはできずじまいで。今は他に誰もいません。貴方の気持ちを聞かせてください」
心の奥まで見通そうとするかのような瞳の力強さに居心地が悪くなり、私は銀之助さんから視線を外す。
沈黙が生まれたことに焦りと緊張を感じながら、返すべき言葉を必死に選んだ。
「正直に言って、今、結婚とかあまり考えられなくて」
「しかし梅子さんは本気であなたの結婚相手を探そうとしていらっしゃる。例え気が乗らなくても、今後お見合いすることになるかもしれない。それなら最初に、うちの孫と会ってもらいたい」
「……そんな風に言ってもらえるなんて。ありがとうございます」
銀之助さんの言葉で胸がじわりと熱くなった。
私は今もなお、なってないとお祖母ちゃんから小言ばかり言われている未熟者だ。お母さんも弟からも、お荷物だと思われているんじゃないかと時々怖くなることもある。