俺様外科医と偽装結婚いたします
続けて、母が両手でワンピースを持ち、私の身体に合わせてきたため、思わず首をかしげてしまう。
「この服、なに?」
「なにって、銀之助さんのお孫さんとの食事会の時、咲良に着てもらいたいと思って買ってきた服よ」
「お母さん。あのね、そのことなんだけど……」
たぶんもう、銀之助さんから連絡は来ないと思う。
そう言おうとした時、店舗から自宅へと繋がるドアが開き、陸翔が店に入ってきた。
「祖母ちゃん見なかった? ……って、なにしてんの?」
お祖母ちゃんの姿を求めてか、ぐるりと店内を見まわしたあと、彼の目線が私で止まる。
「この格好だったら清楚に見えるし、好感度も高くなる。お相手からの第一印象は最高よね?」
母に同意を求められ、陸翔は「なるほど」と苦笑いで頷き返した。
「第一印象は大切だもんな。けど姉ちゃんなら大丈夫! きっと上手くいく!」
爽やかな笑顔で励ましてもらったけれど、残念ながらもう無理である。
とっくに顔を合わせている上に、第一印象はお互い最悪だ。こればかりはもう覆せない。
「お母さん、陸翔。実はあのね……」
深刻さを声に滲ませて、すべてを打ち明けようとした瞬間、また邪魔が入った。