俺様外科医と偽装結婚いたします
「あぁ。陸翔、いたいた。さっきなにを話しかけて……あんたたちなにやってるの?」
現れたのは祖母で、陸翔と同じように、私と母に対して怪訝そうな顔をする。
「姉ちゃんの勝負服の打ち合わせだよ」
陸翔のひと言でお祖母ちゃんは「あぁ」と納得いった顔をした。
「……ところで。銀之助さんのお孫さんってどういった方なの? ご職業は? ハンサム?」
お母さんがにこやかな顔で今更な質問をお祖母ちゃんにすると、お祖母ちゃんは目をぱちくりさせ、ほんの数秒動きを止める。
そこで初めて、お母さんと陸翔も動揺を顔に出し、その場に気まずい空気が立ち込め始めた。
「私がお嫁に行けさえすれば、相手は誰だって良いんだもんね」
つい嫌味を口にすると、お祖母ちゃんは弾かれたように顔を上げ、「咲良!」とたしなめるように呼び掛けてきた。
「なんだよ。祖母ちゃんは知ってるものだとばかり。銀之助さん本人は良い人で間違いないけど、だからと言って孫もそうだとは限らないぞ。姉ちゃん大丈夫か?」
「そうよ! 陸翔の言う通り!」
まさにそうである。あの男は、銀之助さんと血が繋がっているとは思えないくらいに性格が悪い。