俺様外科医と偽装結婚いたします
「あら。銀之助さん、こんばんは! ちょうど今、みんなであなたの話をしていたところですよ」
どきりと鼓動が跳ねた。
お祖母ちゃんは電話口でひと言ふた言やり取りをしたあと、目を見開いた。その顔は驚いているようにも、動揺しているようにも見えた。
断られたのかな。そんな予感を覚えながら、僅かに肩を落とす。
無かったことにされるのが切ない訳ではもちろんない。
陸翔の交際が順調だからこそ、ダメになってしまった私は、これから余計に肩身の狭い思いをすることになるだろう。
想像すると気持ちが重くなっていく。
菫さんに誰か紹介してもらおうという考えに至った時、「咲良!」とお祖母ちゃんが私を呼んだ。
「銀之助さんが、咲良の予定を知りたいって」
「……え?」
「私と咲良、銀之助さんとお孫さんの四人で、なるべく早めに食事をしましょうってさ」
瞬間、隣で母が嬉しそうに飛び跳ねた。
けれど私はまさかという気持ちの方が断然強く、自分の耳を疑ってしまう。
「な、なにかの間違いでは?」
「何言ってんの! どうせ暇だろ? いつでも大丈夫って返事するからね」
「……ちょっ、ちょっと待って!」