俺様外科医と偽装結婚いたします

状況に気持ちが追いつけない私を無視して、お祖母ちゃんが日時を決めようとしている。

慌ててお祖母ちゃんに歩み寄り、電話を代わってもらおうとしたけれど、ことごとく私の手はお祖母ちゃんによって払い避けられてしまった。


「あらあら。そうだったんですか。いやだねー。咲良ったら何も言わないから」


お祖母ちゃんが私に、にやりと笑いかけてきた。

嫌な予感に背筋を震わせた私になどお構いなしに、お祖母ちゃんがにこやかに「失礼します」と電話を切った。


「ちょっと咲良。すでに銀之助さんのお孫さんと知り合いだったのかい?」


祖母のひと言が、お母さんと陸翔の表情を徐々に期待でいっぱいにさせていく。


「……たっ、確かに、知り合いではあったけど……でもね、彼とは――」

「お孫さんも、今日のことで咲良に改めて御礼が言いたいって。もしかして相手も乗り気なんじゃないかい?」

「御礼っ!? あいつがそんなこと言うわけない!」


つい大声で否定してしまい、三人からポカンとした顔で見られてしまった。


「あのね。私と彼は水と油。本当に無理なの」


真剣に訴えかけたけれど、お祖母ちゃんには伝わらなかった。

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