俺様外科医と偽装結婚いたします
「……ス、ストーカー?」
誰が? 私が? この人はいったい何を言っているの? 意味が分からない。
肩越しに、呆然と男を見つめ返した。
私は怯えと憤りでいっぱいいっぱいになり、次の行動に移れずにいるというのに、男の眼差しは冷たさだけが増していく。
「やっと気づいたか。そうだ。お前がしていることは、俺への付き纏い行為に他ならない。はっきり教えてやるから、今ここで頭に刻み込め。俺はお前に好意など持たない。どれだけ周りをうろつこうとも無駄だ。諦めろ。そして謝罪しろ」
男の言葉で、眉間にしわが寄る。怯えが消え、憤りが心の大半を占めていく。
私はありったけの力を込めて男の手を振り払うと、背筋を伸ばして、向き合った。
「好意など持っていただかなくて結構です! 私もあなたみたいな自意識過剰男に興味なんて持ちませんから! 一ミリも!」
はっきりそう言い返したものの、嫌な予感が心に纏わりついてくる。
このままうやむやにもさせたくなくて、私は短く息を吐き、心の中にあるわだかまりをぶつけた。
「いったいなんのことですか? あなたの勘違いじゃないんですか?」
すっと目を細めて、男も息を吐き、そして苛立たし気に続けた。