俺様外科医と偽装結婚いたします
「朝走る時、必ずお前が現れ追いかけてくる。俺は気味が悪くて仕方がない」
告げられた内容に小さく悲鳴を上げ、思わず両手で口を覆う。その部分に関しては反論の余地がない。
「……ちゃんと距離を置いていたから、気付かれてないと思ってたのに」
考えをつい口にしてしまい、ハッとする。恐る恐る視線をあげると、やはり、上から見下ろす形で男性に睨みつけられた。
「認めたな」
「いやっ、違うんです! 決して悪意があった訳ではなく。付き纏おうとかそういうつもりもまったくなくて…………その……ごめんなさい」
言い訳すればするほど険しくなっていく彼の眼差しにどんどん追い詰められていき、私は項垂れるように深く頭を下げた。
「私、嘘をつきました。あなたに一ミリくらい……それよりはもうちょっとだけ、興味がありました」
投げやりな口調になりつつも正直な気持ちを言葉にすると、途端、男性が盛大に顔をしかめた。私は慌てて両手を大きく振り、すぐさま補足する。
「ああっ! 勘違いしないでください! 興味を持ってたのは、あなたの走りに対してだけですから!」
「……は?」
「むしろ、あなた自身に興味を持てそうにもありません。これからもずっと、持ちません」