俺様外科医と偽装結婚いたします
停止した車の後ろが列になり始めたため、運転手の男性は何事もないことを確認したのち、車へと戻っていった。
そして男の子も母親の女性も、深く頭をさげてから、元いた場所へと戻っていく。
私も足首の痛みを我慢しながら一歩前進した時、そっと脇から腕を掴み取られた。
「まったく。どうしてお前はそうなんだ」
横に並び立った人物を見上げ、私は目を大きくする。
「……環さん?」
彼に支えられたまま店の前まで戻って来たところで、たまらず問いかけた。
「どうしてここに? ……だって、もう会わないはずじゃ」
罰の悪そうな顔をしてから彼は私の腕を放し、そして私が放り出した箒をお店の入口近くに立てかけた。
「仕方ないだろ。見てみぬふりができなかったんだから」
言うなり彼に再び腕を掴み取られ、私の身体を支えるように大きな肩へと回される。ゆっくりと歩を進め、彼が店の扉を開けた。
「あぁ、すみません。もう昼休憩に入ってしまって……って、あらやだ。環さんじゃないか」
「ご無沙汰しておりました。すみません。椅子をお借りします」
「どうぞどうぞ。狭いところですが、好きな所に座ってください」
突然の環さんの登場にお祖母ちゃんは目を潤ませながらあっという間に歩み寄ってくる。