俺様外科医と偽装結婚いたします

環さんは手近な椅子に私を座らせると、そのまま床に片膝をつき、私の足首を掴む。


「痛っ! ちょっと! 何するのよ!」


私は今、白のブラウスに膝が隠れるくらいの黒色のタイトなスカートを履いている。

一応この店の女性陣は統一感を持たせるために、お祖母ちゃんもお母さんも同じような色合いを身に着けている。

環さんに何の気も無い。むしろ職業柄、医者と患者という意識のもとに向き合っているだけ。

そう頭では分かっているのに、素足にじろじろ見られていることに、恥ずかしさが募っていく。


「足首はしっかりテーピングした方が良い。俺がやろうか。それに血も出てるから、こっちの処理も」

「え? ……あ、本当だ」


膝から血が出ていたことに気づき驚いていると、環さんの後ろからのぞき込んできたお祖母ちゃんが顔をしかめた。


「いい年して、怪我ばっかり。どうしようもない子だね、本当に」


思わず口を尖らせた私を見上げて、環さんが苦笑いを浮かべた。そして後ろに立っているお祖母ちゃんへと話しかける。


「すみません。救急箱かなにかありますか? あったらお借りしたいのですが」

「はいはい。ちょっと待ってておくれ」


嬉しそうな足取りで、しかも「ほんとうに良い男だね」と呟きながら、お祖母ちゃんは自宅へと引っ込んでいく。

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