俺様外科医と偽装結婚いたします

『その後、環は咲良さんの怪我の具合を見に来ましたか?』とか、『そろそろ、二人で食事にでも行ってはどうかと言ったのですが、誘いはありましたか?』や、『なにかしら連絡はありましたか?』など。

どれもこれも答えづらいものばかりで、最近は「咲良さん」と呼びかけられるだけで、嫌な汗をかいてしまうほどである。

そして今日もまた、連絡を取り合うどころか連絡先を知りもしない私にとって、答えに困る質問が飛び出してきた。

諦めるまでに半年と、環さんが言い切れるくらい銀之助さんを熟知しているように、銀之助さんだって孫である環さんがどのような行動に出るかをよく分かっているのだろう。

もしかしたら、私たちがあまり連絡を取り合っていないのではと、考えているのかもしれない。


「環ときたら、仕事以外のことに気が回らなくて、申し訳ない」

「……いっ、いえ。そんなことは、まったく」

「それじゃあ、環を通してではなく直接、咲良さんにお願いしておこうかな」


お願いと言われ、思わず肩に力が入った。何を言われるのかと怖くなる私をよそに、銀之助さんはコーヒーをひと口飲んで息を吐いてから、再び私へと顔を向ける。

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