俺様外科医と偽装結婚いたします
いつの間にか私の傍にやって来ていたふたりが失礼なことを口走っている。
しかめっ面でそのやりとりを聞いていると、銀之助さんが慌てて口を挟んだ。
「いえいえ。こちらからお誘いするのですし、その辺りも今回はこちらで準備させてもらうということで、どうでしょう?」
銀之助さんの提案に、嫌な予感が膨らみ出す。顔が強張ったまま、何も言えずにいる私の傍らで、お祖母ちゃんが声をあげる。
「そんなの悪いですよ。この前も食事をご馳走になっていますし」
「気にしないでください。私がやりたくてすることですから」
「でもねぇ」
申し訳なさそうにお祖母ちゃんが呟くも、銀之助さんの気持ちは言葉通り固まっているようだった。
「ぜひそうさせてください」
力強くそう言い放ったあと、銀之助さんが私を見た。そして微笑みと共に、次の一手を打ってくる。
「買い物のお供に、環を連れて行きなさい」
ほんの数秒、呼吸が止まった。
環さんと一緒に買い物に行く。そんな事態は絶対に回避しなくちゃいけない。
私はしどろもどろになりながらも、否定的に言葉を返した。