俺様外科医と偽装結婚いたします
「……い、いや。でも……環さん、お忙しそうだし、無理かと」
「確かに環の予定に会わせてもらうことになるかもしれませんが、無理などではありません。時間は作らせれば良いのです。細かい日時はふたりで相談して決めてください」
銀之助さんに鋭く見つめられ、私はごくりと唾をのむ。
環さんと似通いすぎているその表情に、血のつながりを感じずにはいられなかった。
決して穏和なだけの人ではない。病院の院長を務めているだけあって、表情や声音に、相手に有無を言わせない迫力が混ざっている。
このままだと、ごまかし切れないかもしれない。そんな不安感が心に広がっていく。
「パーティの前にもう少し仲良くなっておくためにも、ここは銀之助さんの言葉に甘えて、環さんとふたりで買い物に行ってくると良いよ」
すり寄るようにすぐ傍に並んだお祖母ちゃんをじろりと睨みつけ、「余計なこと言わないで!」と喚きたくなるのをぐっと堪えた。
しかし、お祖母ちゃんが私のエプロンのポケットから勝手にスマホを掴み取ったことで、動揺が更に大きくなっていく。
「ちょっと! 返して!」
声をあげると、意外にもあっさりと、お祖母ちゃんが素直に私のスマホを差し出してきた。