俺様外科医と偽装結婚いたします

声を潜めつつも、必死に弁明しようとしたけれど、環さんにため息で遮られてしまった。


「ばれたなら仕方ないか」


言いながら、彼はジャケットのポケットからスマホを取り出し、再び私を見上げてきた。

目で訴えかけられ、思わず眉根を寄せる。

もしかして、彼は私と番号を交換しようとしているのだろうか。

様子からそう判断しても、まさかという思いが強すぎて自分の考えを軽く否定してしまう。

固まっている私にしびれを切らしたのか、環さんが再び口を開いた。


「お前とは、この先連絡を取り合う必要が出来た」


必要になる理由は一つだけ。銀之助さんの誕生日パーティだ。

連絡先を交換してしまったら最後、きっと私は環のパートナーとしてパーティに出席することになるだろう。

頭を抱えたくなる予感に泣きそうになっていると、私を見つめていた環さんが「まさか」と囁きかけてきた。


「お前、すでに俺の番号を知ってたとか言わないよな」

「ふざけないでよ! なんであんたのなんか! 私が知ってるわけないでしょ!」


またストーカー扱いされたことに声高に噛みつくと、厨房の方から「ね、姉ちゃん?」と戸惑う陸翔の声が聞こえてきた。

< 84 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop