俺様外科医と偽装結婚いたします
声を潜めつつも、必死に弁明しようとしたけれど、環さんにため息で遮られてしまった。
「ばれたなら仕方ないか」
言いながら、彼はジャケットのポケットからスマホを取り出し、再び私を見上げてきた。
目で訴えかけられ、思わず眉根を寄せる。
もしかして、彼は私と番号を交換しようとしているのだろうか。
様子からそう判断しても、まさかという思いが強すぎて自分の考えを軽く否定してしまう。
固まっている私にしびれを切らしたのか、環さんが再び口を開いた。
「お前とは、この先連絡を取り合う必要が出来た」
必要になる理由は一つだけ。銀之助さんの誕生日パーティだ。
連絡先を交換してしまったら最後、きっと私は環のパートナーとしてパーティに出席することになるだろう。
頭を抱えたくなる予感に泣きそうになっていると、私を見つめていた環さんが「まさか」と囁きかけてきた。
「お前、すでに俺の番号を知ってたとか言わないよな」
「ふざけないでよ! なんであんたのなんか! 私が知ってるわけないでしょ!」
またストーカー扱いされたことに声高に噛みつくと、厨房の方から「ね、姉ちゃん?」と戸惑う陸翔の声が聞こえてきた。