俺様外科医と偽装結婚いたします
すかさず注意すると、陸翔はそんなの分かってるよといった顔で私を見た。
「だって環さんだよ? サービスするに決まってるだろ?」
厳しくぴしゃりと言い放ってから、陸翔は環さんへと顔を戻し、揉み手をする。
「そういうことですので、遠慮せずに食べてください」
「いや、でも……それは申し訳ないから、代金は払うよ」
「本当に気にしないでくださいよ! 味を気に入ってくれたら、また来てください! それだけでじゅうぶんですから」
そんなお願いにも、環さんが困り顔を崩さずにいるのを見て、陸翔が納得したように頷いた。
「分かりました。それなら姉ちゃんの給料から差し引いときます」
「なんでそうなるのよ!」
まさかの事態に慌てる私をよそに、環さんが淡々と話を続けた。
「あぁ、それなら俺もちっとも心苦しくないな。だったらサラダを大盛にしてくれ。ついでにデザートも何か追加しておこうか」
「ちょっと!!」
流れに乗じて、川元さんまで「俺も咲良ちゃんのおごりでライス大盛」と言い出したため、「もう!」とふくれっ面をしていると、菫さんが不思議そうに口を開いた。
「一度も姿を見かけたことがなかったけど、久郷先生もコスモスの常連だったんですね」