俺様外科医と偽装結婚いたします
銀之助さんが好きだから、私もみんなと一緒に、誕生日を祝ってあげたい。
その気持ちに偽りはないけれど、環さんと一緒に参加してしまったら引き返せなくなってしまうのではという怖さも正直感じている。
行動を共にしたら、招待客は私を彼の婚約者という目で見るだろう。もしくは、銀之助さんから孫の婚約者として紹介されてしまう事態だって十分あり得る。
今後、マイナスのイメージを背負うことになるのは、環さんに他ならない。
そのことも含めて、このまま茶番とやらに付き合ってしまっても良いのか改めて問いかけようとすると、先に環さんが口を開いた。
「夜なら、いつ空いている? ……ちなみに明日は?」
誘い文句に気持ちが削がれ、私は進む先を見失ったように目を泳がせた。
「……おい、咲良。聞いてるか?」
突然名前で呼びかけられことにドキリとさせられる。
背筋を伸ばしつつ、スマホをしっかりと持ち直した。
「はっ、はい! 聞いてます! 明日も明後日も空いてます。暇ですから」
続けて思わず口走ってしまった自分の情けなさを暴露するような返答に、泣きたくなる。
「暇なら出て来られるよな。夜七時半に迎えに行く。よろしく……おやすみ」