アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】

確かに、ここは都心のタワーマンション。おまけに最上階のペントハウスだ。きっとそれが妥当な金額なのだろう。でも、二億円のマンションだよ。そんな大金を私達家族の為にポンと出してくれたなんてとても信じられない。


昨夜の件で疑い深くなっているせいか、何か裏があるんじゃないかと勘ぐってしまう。


「それに、八神さんがアメリカに行ったのは、姉貴との約束を守る為なんだろ?」

「えっ、八神常務、そんなことも翔馬に話したの?」

「まさか……これは、早紀ちゃんに聞いたんだ」


早紀さんは、自分に何も言わず八神常務が渡米したことが許せなくて文句を言ってやろうと八神常務に電話をしたそうだ。でも、何を聞いても答えてくれない。


そこで早紀さんは、アメリカに行った理由を教えてくれなのなら、八神常務の過去の秘密を伯母さんにバラすと脅した。


伯母さんとは、早紀さんの父親の妹で、バイオコーポレーションの社長の奥さん。とても厳しい人らしく、八神常務が唯一、苦手としていた人物だった。


「で、八神常務の過去の秘密って何?」

「なんかさ、八神さんが高校生の時、当時飼っていた大型犬を連れて早紀ちゃんとバイオコーポレーションの社長の家に遊びに行ったそうなんだけど、その犬が目を離した隙に、奥さんが大切に育てていた庭の花をめちゃくちゃにしちゃったみたいでさぁ……」


奥さんが苦手な八神常務は恐怖で震え上がり、謝ることなく家に逃げ帰ったそうだ。そして早紀さんに、このことは絶対に秘密だぞと言ったとか……


「それが……秘密?」

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