アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】
「なるほどな……俺は一年前のクリスマスに、一番欲しかったプレゼントを貰い損ねていたってことか……」
「私も、貰い損ねちゃったみたい……」
ふたりして苦笑すると、どちらからともなく指を絡めお互いの手を強く握り締めた。
「じゃあ、今年は、去年のと合わせて二年分のクリスマスプレゼントを貰わないとな」
そう言ったのと同時に素早くシャツを脱ぎ捨て、逞しい筋肉質の裸体が露わになる。目のやり場に困り視線を左右に振ると、そのまま倒れ込むように私の上になった八神常務が艶っぽい瞳で私を見た。
「怖くないから……心配するな」
「……はい」と返事はしたものの、緊張で鼓動が激しくなり、まるで全身が心臓になったよう。
そんな私を八神常務は胸に引き寄せゆっくり愛してくれた。溶けてしまいそうな優しいキスが心の中の不安という名の氷を溶かし、代わりに温かくて甘い愛の蜜でいっぱいにしてくれる。
そして一糸纏わぬ姿になって直接彼の肌に触れると、体の内側がカッと熱くなり、何も考えられなくなってしまった。
それからどのくらい時間が経ったのだろう……私は鈍い痛みと共に愛しい人を受け入れ、やっと大人の女性になれたんだ……
内側から押し寄せてくる身を切るような痛みと微かな快感に身を震わせ、自然に漏れる声。ふたりの息遣いとシーツが擦れる音が室内に響き、これが愛し合うということなんだと実感する。
「あぁっ、八神……常務」
堪らず彼の体を抱き締め名を呼ぶと「愁でいい」という掠れた声が聞こえてくる。言われるまま「愁……」と呼ぶと「――紬」という声が返ってきた。