アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】
その時、私のスマホに再び着信があり、山辺部長かと思い焦ったが、表示されていた名前は"高橋唯"。ホッと胸を撫で下ろし電話に出たのだけれど、聞こえてきた唯の声はめっちゃ不機嫌だった。
『ねぇ、私達、親友だよね?』
「何言ってんのよ。当たり前じゃない」
『だったらさぁ、どうしてこの前の電話で並木主任が社長の養子になったってこと教えてくれなかったのよ』
えっ……?
どうして唯がそのことを知ってるんだろうって驚いたけど、栗山さんからの情報だと聞き、納得する。
愁が社長の養子になったってことは、根本課長が秘書課で話していたから栗山さんも知っていた。でも、根本課長は、他の課の社員には絶対に口外しないよう口止めしていたはず。
なのになんで言っちゃうかなぁ~本社から遠く離れた研究所に居る唯なら大丈夫だって思ったのかな。
『ほらほら、もう隠し事はなしだよ。全部正直に話しなさい!』
「う、うん……」
後ろめたい気持ちはあったけど、そこまでバレているなら仕方ない。絶対に誰にも言わないでと念を押し、愁が社長の甥で後継者になる為、養子になったと話すと唯が素朴な疑問を口にする。
『ねぇ、後継者に選ばれるくらい信頼されていた並木主任が、どうして情報漏洩の犯人ってことになっちゃったのよ?』
「それは……」
これは、たとえ唯でも言っちゃいけないと思った。でもその時、心が激しく揺れ、このモヤモヤした気持ちを吐き出してしまいたいという衝動に駆られた。