アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】

それからすぐに食事会はお開きになり、マンションに戻って来たのだけれど、大嶋専務が言っていたことを思い出し悶々としていた。


愁が私を諦めたってどういうことだろう? 愁本人が大嶋専務にそう言ったんだろうか? いや、愁と大嶋専務は仲が悪そうだからそんな話しはしないか……これはもう、愁本人に聞くしかない。


愁が居るニューヨークとの時差は十三時間。今、こっちは夜の十一時だから、丁度向こうはランチの時間だ。


「よし!」と呟き、スマホの通話ボタンをタップすると、ワンコールで愁が電話に出た。


『どうした? 何か問題でもあったのか?』


今まで仕事の邪魔をしちゃいけないと思って私からの連絡することはなかったから、突然の電話に驚いたのだろう。心成しか愁の声が上ずっている。


「問題というか……ちょっと聞きたいことがあって……」


今日の食事会のことを手短に説明し、大嶋専務が言った言葉の意味を聞いてみたが『そんなことでわざわざ電話を掛けてきたのか』と完全に呆れている。


「でも、大嶋専務、自信満々だったし……」

『なんか勝手に勘違いしてるんだろう。それより、早紀と翔馬のことを、あの頭カチカチの和志(かずし)君が許したって方が驚きだ。絶対に反対すると思っていたのになぁ~』


"愁"と"和志君"か……ふたりは幼馴染みだもんな。普段はそう呼び合っているんだ……


「でも、どうして早紀さんのお兄さんが大嶋専務だって教えてくれなかったんですか!」

『んっ? 言ってなかったっけ?』

「言ってませんよ。それと、大嶋専務が言ってましたよ。早紀さんを愁に取られるのだけは絶対にイヤだって。相当、嫌われてますね」

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