アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】
愁との電話から一週間が経った……が、特にこれと言って変わったこともなく、根本課長と山辺部長の繋がりを証明する証拠も掴めないままだった。
「そろそろお昼ね。栗山さんと新田さん、今日はふたりとも十二時からランチに行ってちょうだい」
根本課長がパソコンのマウスを連打しながらそう言うと、私と栗山さんは顔を見合わせ目をパチクリさせる。
ランチ時でも秘書課を空にするワケにはいかないので、いつもは私と根本課長が先に昼休みを取り、栗山さんは一時からというのがお決まりのパターンだった。だから、栗山さんと一緒に昼休みを取るは初めて。
なんでも、根本課長は一時にお見えになるお客様と社内で一緒に昼食を取る予定になっているそうで、その間は秘書課には戻って来れないそうだ。
「新田さんに緊急の対応はまだ無理でしょ? 栗山さんが居てくれれば安心だわ」
なるほどね。入社六年目の古株でも秘書課では新人。私には任せられないってことか。
ちょっぴりへこんだが、栗山さんと一緒にランチができるんだから良しとしようと気持ちを切り替え秘書課を出る。
何を食べようかと栗山さんと談笑しながら廊下を歩いていると、エレベターの到着音が聞こえ、背の高い男性と小柄な女性が下りてきた。
あっ、大嶋専務と元木さんだ。そういえば、大嶋専務とはあの食事会以来顔を合わせていなかったなぁ……
栗山さんはその場に立ち止まって会釈したが、私は大嶋専務の元に駆け寄り、改めてご馳走になったお礼を言った。すると仕事モードで厳しい表情をしいた専務の顔が緩む。