アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】

早紀さんのお願いとは、新作のウェディングドレスの発表会があるので、一緒に行って欲しいというものだった。


『一年前に結婚した親戚の人が居るんですけど、その人に頼まれまして……』


あ、一年前ってことは、私が愁と早紀さんが結婚すると勘違いした……あの時、実際に結婚した親戚の人のことか。


『結婚式の時にお世話になったウェディングドレスのデザイナーさんが、結婚に興味がある独身の女性が居たら発表会に招待したいので紹介してもらえないかって言ってきたそうなんですけど、自分の周りには居ないから私に誰か居ないかって……』


でも、まだ学生で若い早紀さんの周りにも真剣に結婚を考えている人は居なかった。なので、私に白羽の矢が立ったということらしい。


しかしこのタイミングで結婚とかウエディングドレスとか言われでも全くときめかない。むしろ今はそのワードを聞きたくなし、考えたくもない。


だからキッパリ断ろうとしたのだけれど、早紀さんはもう先方に私が行くと言ってしまったので断れない。なんて勝手なことを言う。


『発表会は明日の夕方六時からです。少しくらい遅れてもいいので、仕事が終わったら来てくださいね。場所は赤坂のアルビオン・ガーデンホテルの最上階です。じゃあ、宜しくです!』

「えっ? ちょっ……まだ私、行くとは……あっ、切れちゃった……」


ったく、翔馬といい、早紀さんといい、こっちの都合も考えず、どうしていつも突然なのよ。今の私はそれどころじゃなんだから!


イラついてスマホをソファーに投げ捨てると、再びスマホが鳴りだす。

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