アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】
――そして翌日……
仕事を終えた私は、早紀さんに誘われたウエディングドレスの新作発表会に顔を出し、ランウェイを歩くモデルをため息混じりに眺めていた。
「はぁ~……綺麗ねぇ~」
渋々来た発表会だったけれど、いざ純白のウエディングドレスを目の前にすると、その清楚な美しさに見惚れてしまう。
「ねっ、来て良かったでしょ? 気に入ったドレスは後で試着できるんですよ」
「えっ、そうなの?」
早紀さんより私の方がウキウキしている。こんなにテンションが上がったのは久しぶりだ。なんだかんだ言っても、やっぱりウェディングドレスには憧れがある。
ショーが終わりフィッテイングタイムになると、広いホールにカラードレスも運び込まれ、多くの女性がそれぞれお目当てのドレスの試着をしようと集まってきた。
私もチェックしていたドレスの前に駆け寄り、ドキドキしながらソッと光沢のある生地に手を伸ばす。と、その時、前から歩いてきた四十代くらいの背の高い女性に声を掛けられた。
「八神様のご紹介で来られた方ですよね?」
「あ、はい」
「初めまして。八神様の結婚式でドレスを担当させて頂きましたデザイナーの瀬戸(せと)です。お好みのドレスが見つかりましたら遠慮なく試着してくださいね」
瀬戸さんは柔らかい笑顔でずっと私の横に立ち、付きっ切りでドレスの説明をしてくれていた。そして悩んだ末チョイスしたのは、オーガンジーレースを贅沢に使ったビスチェタイプのAラインドレス。
フィッテイングルームで係の人に手伝ってもらいながらドレスを試着し、鏡で全身を確認すると思わず熱っぽいため息が漏れる。
「あぁ……素敵……」