アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】
――合同会社の設立発表が行われる一月三十日まで、後四日と迫った火曜日の午後、山辺部長から、仕事が終わったら電話をして欲しいとメールがあった。
なんだろう……
気になって仕事どころじゃない。ソワソワと時計を気にしていると、社長室から戻って来た根本課長に、緊急ミーティングをするので社に残っている秘書課の社員全員を集めるようにと言われた。
緊急ミーティングの内容は、合同会社の設立発表会について。当日は秘書課全員が会場となるホテルに出向き、受付や海外の方への通訳、広報と連携してマスコミなどの対応等々。様々な仕事があると説明を受ける。
「記者会見は午後一時から。場所は赤坂のアルビオン・ガーデンホテル一階の扇の間。二時からは場所を最上階の飛翔の間に移し、国内外の関係者をお招きして設立パーティーが行われます」
アルビオン・ガーデンホテルって言えば、私がエステの為に通っていたホテルじゃない。そう言えば、一年前に結婚した早紀さんの親戚もあのホテルで式を挙げたって言ってたし、八神家と何か繋がりがあるのかもしれないな。
「あ、それと、記者会見の前に昼食を兼ねた打ち合わせがあります。社長の挨拶も予定されていますので、必ず出席するように」
合同会社の設立発表会には、本社以外の支社や研究所の代表者も出席するとのこと。打ち合わせは結構な人数になりそうだ。
隣りに居た元木さんがその説明を聞き「私達秘書課は、食事をしている暇なんてないでしょうね」とため息を付く。