フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

その日、ほとんど初対面だと言っていいわたしたちは……

我が国を代表する老舗ホテルで、淡々と結婚式を済ませ、そのあと政財界からお越しになった錚々たる方々の前で盛大な披露宴を終えた。
(テンシやその親友など、町田の学園で幼稚部から一緒に育った学友たちも来てくれていたけれども、秒刻みのタイトなスケジュールではとてもとても会って話をする暇などなかった)

教会(チャペル)での「結婚証明書へのサイン」は、御丁寧にも「婚姻届」への署名捺印だった。
(たぶんうちの父が、わたしがせめてもの「最後の抵抗」で婚姻届を拒否するかもしれないと考えたからだろう)

そして、婚約者から「夫」となった(ひと)からの「誓いのキス」は、わたしの唇に限りなく近い(きわ)に落とされた。
(彼が覆い被さって列席者の目からわたしの顔を隠したため、気づいた人はだれもいないだろう)


そして——

その日の夜、老舗ホテルのスイートルームで……

わたしたちは、初めて二人きりになった。

——いくらお見合い結婚だからって、こんなのたぶん江戸時代でもなくない?


対面のソファに腰を下ろした「夫」となった人が口を開いた。

『今まで、中国への出店準備のために君のことを(ないがし)ろにしていて申し訳なかった』

わたしは「謝罪」された。


——ふうん、一応は『悪かった』って思ってるんじゃん……

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