フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
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バンケットルームの眩い光の中、わたしは自分の左手薬指を眺める。
メレリオ・ディ・メレーの婚約指輪のどでかい楕円形ダイヤモンドが、周囲のメレダイヤと「共鳴」してあり得ないくらいギラギラと輝いていた。
いつもつけている結婚指輪は同じくメレリオのものだが、アネルシリーズの「シンプル」は幅が五ミリもあって重ね付けするにはあまりにも存在感がありすぎるため、今夜は右手の薬指だ。
——たった今、思ったんだけど。
もしかしたら、この指輪たちは……
小笠原のことを『ずっと公私に渡ってサポートしてまいりました』って言っていた、あの秘書が選んだものかもしれないな。
だからといって……
指輪に罪はないし、デザインもわたしの雰囲気に良く似合っているし……
何より、こんなに吸い付くようにジャストフィットしているんだもの。
(さすがに左手薬指用のマリッジを利き手のため少し太い右手薬指につけると若干キツく感じるが、それでも許容範囲だ)
金輪際二度とつけないなんて、大人気のない子どもじみた選択肢はカケラもないけれども——
「……テンシ、わたしやっぱり今夜はこれで失礼するわ」
だからといって……
——まったくムカつかないわけじゃないのよ?
わたしは今度こそ、目にも鮮やかなフューシャピンクのドレスの裾を翻し、バンケットルームの出口に設けられた重厚なドアに向かって、十二センチのハイヒールで颯爽と歩いて行った。