フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
💟 Fake 3

「夫」不在で快適です…?


三年前の「結婚」以来、わたしはベリが浜に面したこの最高級ホテルを「定宿(すまい)」としている。

もちろん、ラグジュアリー(クラブ)フロアにあるプレミアスイートだ。


昼下がりの今、全室オーシャンビューの名にふさわしい広々としたテラスに出た。

海がよく見えるように配置された、片側だけアームのあるカッシーナのカウチソファに腰を下ろす。

ふかふかながらも程よく体を支えてくれるクッションに、この身を任せる。

近代建築の巨匠ル・コルビュジエとその甥であるピエール・ジャンヌレ、そして女弟子だったシャルロット・ペリアンの三人による「グランコンフォール」をリブロダクト(復刻)した「LCシリーズ」のもので、屋外でも使える仕様だ。

中でもこのカウチソファは「Meridienne」と呼ばれ、一九二八年にシャルロット・ペリアンがスケッチしたのが原案だそうだ。


サイドテーブルに用意されていた紅茶を、座り心地抜群のソファで飲む。

一階にあるティーラウンジにオーダーしてこの部屋まで持ってきてもらった「いつもの」フォートナム・アンド・メイソンのアールグレイクラシックである。


——あぁ、海から吹いてくる風も心地よい……


ところが、塩分を含んだ潮風は「生活するには」なかなかに厳しい。

車のボディは錆びつきやすくなり、建物も劣化が激しくなると言われる。

それが人間ともなると、お肌はガサガサ、髪の毛はバサバサになり、美容にとっては大敵以外の何物でもない。


——そろそろ、サロンでお手入れでもしようかな。


わたしはサイドテーブルに常時置かれているインルームフォーンを手にした。

通話のボタンを押すだけで、このホテルのクラブフロア専属のコンシェルジュに直通だ。


「……もしもし、レイカだけど、
竜生(りゅうせい)くんのスケジュールはどうなってるかしら?」

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