フルール・マリエ
「叔母さん、遠慮とか無くてごめん」
「ううん。千紘がお母さんにも叔母さんにも大切にされてること、よくわかった。それにしても、びっくりしたね。クラッカー出てきたし」
駅までの道を並んで歩きながら、くすくすと笑った。
「千紘の初恋が私だったなんて知らなかったよ」
「あれは、余計だったな。勘違いしないでほしいけど、昔は昔、今は今だから。初恋関係無く、俺は今、聖が好きだからね」
そんなストレートに言われると、くすぐったい。
「聖の初恋は?」
「さあ・・・。中学とかじゃないかな」
「ちぇっ、ちょっと期待したのに」
「昔は昔、今は今、なんでしょう?」
少し不貞腐れた千紘に同じ言葉を返すと、すぐに機嫌を直してくれた。
「叔母さんに焚き付けられたからだけど、聖が俺を、あんな風に言ってくれるなんて思わなかった。俺が思ってるより、聖は俺に惚れてくれてるんだね」
にっこりと自信満々に言われると、思わず否定したくなる衝動が湧き上がる。
でも、私ばかり翻弄されているのも癪なので、否定したくなる衝動を抑えて、千紘が面食らうような言葉をたまには私も言ってやるんだ。
「残念でした。千紘が今、思ってるよりも千紘に惚れてますから」