フルール・マリエ
千紘から反応が返って来なくて、ちょっと不安になり、千紘の顔を伺うと、思った以上に面食らった顔をしていた。
「び、っくりした。絶対、肯定してこないと思った」
作戦は成功したらしく、千紘は大げさに目を瞬かせていた。
「私も天邪鬼ばかりじゃないんだから」
「でも、素直な聖は大変だね」
「大変?」
何が?と声を出す前に、口を塞がれて息が止まったけど、すぐに千紘が離れて行き、微笑んだ。
「俺のこういう衝動をどこでも受け止めなきゃならなくなる」
ちょうど人がいない時を狙ったのだろうけど、どこで誰に見られているかもわからない道端、見境なさすぎる。
「それに、素直な聖は今日は家に帰れなくなった」
「何言ってるの?」
千紘は私の手を握って手を引く。
「だって、俺が連れて帰るから」
私が千紘を翻弄するなんて、何年あっても無謀なことかもしれない、と思い始めた。