フルール・マリエ


数日後に浜崎様から連絡があり、旦那さんも来店することを伝えられた。

説得が上手くいったのかと喜んだが、奥さんの声は喜び切れていない様子だったので訊ねると、挙式自体には乗り気ではないものの、そんなにやりたいなら仕方がない、と諦め要素の強い承諾だったようだ。

だから、タキシードも短時間で決めたいとのことだった。

電話を切った後も、煮え切らない気持ちだった。

結果的に挙式はやることができそうなのだから、良しとしてもいいのだが、奥さんの少し沈んだような声が気になっていた。


事務所に戻ってネット検索をしていると、熟年結婚式というのは、やはり増えてきていて、挙式だけ、親しい人だけ、と小さな結婚式に需要が集まっている。

写真を見ていると、還暦を超えたような夫婦が満面の笑みでフラワーシャワーを浴びている写真を見つけた。

浜崎様は今のままで最高の思い出になる挙式を挙げられるんだろうか。


< 110 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop