フルール・マリエ


先に休憩をしていた牧さんが携帯から顔上げ、お疲れ様です、と頭を下げた。

牧さんのお弁当はいつ見ても小さくて、足りているのか不思議に思う。

牧さんの斜め向かい側の席に着き、お弁当を広げる。

「朝見さんって結婚願望あります?」

唐突な質問に飲み物が気管に入ってむせた。

「人並みにはあると思うけど」

「クリスマスにプロポーズされたんですけどー」

「え!?この前付き合い始めた彼氏に?」

「あ、ごめんなさい。元彼の方です」

状況がよくわからず混乱する。

クリスマスにデートに行ったのは、新しくできたという彼氏だったのではなかったか?

「今彼とはデートしましたよ。帰った後に、元彼から呼び出されて、やり直したいって言われたんです。プロポーズと一緒に」

私の経験や想像を軽々超えてくる牧さんの話に、どういう顔をしていたらいいのかわからなかった。

「受けるの?」

「25歳までには結婚したいと思ってて、元彼とは嫌いで別れたわけじゃないから、アリかなーとは思ってるんです。でも、この人が運命の人なのかなって疑問なんですよね」

焦るような年でもないように思うが、価値観は人それぞれか、と思い直す。



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