フルール・マリエ


「あのルックスだから、すごいモテて、それでも付き合えたことは、今ではちょっとした自慢なんです。まぁ、付き合ったのなんて数ヶ月だけなんですけどね」

「数ヶ月だけですか。それは、どうして?」

口走って、行き過ぎたと思った。

ただ、相槌を打ちながら聞き役に徹しているべきだったのに、完全に公私混同してしまった。

立ち入ったことだと、謝ろうとしたら新婦が先に小さく笑って続ける。

「疲れたっていうのが本音ですかね。千紘君、モテるからヤキモチばっかり妬いて、いつも千紘君の気持ちが私に向いているのか確認して」

ああ、そうなってしまう気持ちがわかるような気がする。

「それでですかね、選んだ夫は真逆ですから。安心感って大事だなぁって思いました。その点では、千紘君のおかげで今の夫と結婚できたのかもしれません。感謝しないと」

牧さんが言っていた、付き合う相手と結婚する相手は違う、という言葉を思い出す。

新婦の顔を見ていれば、今が幸せであることは一目瞭然だ。

何を不安に思っているのだろう。

いや、この不安は新婦に対して向いているのではなく、私自身に向いているのか。



< 135 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop