フルール・マリエ
「あのルックスだから、すごいモテて、それでも付き合えたことは、今ではちょっとした自慢なんです。まぁ、付き合ったのなんて数ヶ月だけなんですけどね」
「数ヶ月だけですか。それは、どうして?」
口走って、行き過ぎたと思った。
ただ、相槌を打ちながら聞き役に徹しているべきだったのに、完全に公私混同してしまった。
立ち入ったことだと、謝ろうとしたら新婦が先に小さく笑って続ける。
「疲れたっていうのが本音ですかね。千紘君、モテるからヤキモチばっかり妬いて、いつも千紘君の気持ちが私に向いているのか確認して」
ああ、そうなってしまう気持ちがわかるような気がする。
「それでですかね、選んだ夫は真逆ですから。安心感って大事だなぁって思いました。その点では、千紘君のおかげで今の夫と結婚できたのかもしれません。感謝しないと」
牧さんが言っていた、付き合う相手と結婚する相手は違う、という言葉を思い出す。
新婦の顔を見ていれば、今が幸せであることは一目瞭然だ。
何を不安に思っているのだろう。
いや、この不安は新婦に対して向いているのではなく、私自身に向いているのか。