フルール・マリエ
新婦の着替えを終えると、慌ただしく店内に入って来た男性が息を切らしていた。
「新郎様、お見えになったようですよ」
「仕事なんだから、1人でいいよって言ってたのにー」
新婦は新郎のもとに駆け寄って、背中をさすっている。
「仕事、終わったから、来てみたんだけど、終わっちゃったよね?」
「今、帰ろうとしてたとこだよ。もー、走って来なくても。今日は私だけで大丈夫だし、写真も撮ってもらったから見れるのに」
「うん、でも、一緒に決めたかったから」
新婦は困った顔をしながらも、どこか嬉しそうにしながら笑っていた。
確かに千紘とはタイプが違うが、優しく温和で、新婦のことを大事にしていることが伝わってくる新郎だ。
幸せそうに微笑んだ新婦の顔が脳裏に浮かぶ。
和光様2人が手を繋ぎながら、仲睦まじく帰って行くのを、頭を下げて見送った。