フルール・マリエ
店から駅まで歩いていると、千紘から電話がかかってきて、途中で拾われることになった。
車に乗った時から、千紘が何かを話そうとしている気配を感じていた。
「今日のことなんだけど、何か、聞いた?」
和光様の話だろうな、とは思っていたが案の定だった。
「大学の時に付き合ってた、って話?」
「それだけ?」
「他にも何かあるの?」
「無い」
嘘つけ。
「大学時代に誰かと付き合ってても、とやかく言わないよ?和光様、今や幸せそうだったし、良かったじゃない」
「まぁね。それは普通に喜ばしいことだったよ」
「千紘は何を心配してるの?他に何を聞いたと思った?」
珍しく、千紘に焦りのような気配を感じる。
完全に失言だったんだろう。
「千紘からこの話振ったんだから、曖昧にしないでよ。・・・逆に心配になる」
前に付き合っていた人にまで嫉妬したところで意味が無いと思う反面、意味深に隠されると未練でもあるんじゃないかと怖くなる。