フルール・マリエ
「でも、断られて良かったかなって」
「どうしてですか?」
「連れて来てって言った友達はまだ独身だから、ちょっと期待したんだと思います。勝手なんですけど、千紘君が大学時代の友達と付き合ってほしくないな、って思っていたので、断られた時にちょっと安心しました」
卑しいですよねー、と新婦は顔を歪ませた。
「同窓会に来ても、その友達には勝ち目なかったかもしれませんけどね。千紘君には決まった人がいるみたいに見えたので。もう結婚してるとかですか?」
「独身だと聞いていますけど」
「へえ、じゃあ彼女なんだ。連絡先聞いたら、不安にさせるようなことをしたくない人がいるって言ってたから。なんか千紘君変わったなぁって。女子は一律同じで、特別な人を作る気なんてなさそうだったのに」
背中のリボンを整えながら、鼻の奥がツンとした。
「はい。それじゃあ、開けますね」
私は今どんな顔をしているのだろう。
何かを悟られることは無いとは思うけれど、少し俯き加減で新婦を新郎のもとに案内した。