フルール・マリエ
メナージュ
眩い陽光に包まれる季節。
ある日の朝礼の最後に、私事ですが、と改まった声で牧さんが報告をする。
「7月に入籍しました」
左手に光る結婚指輪に一瞬触れて、頭を下げた。
従業員からはおめでとう、という言葉と共に温かい拍手が送られ、牧さんは照れ臭そうに微笑んでいた。
牧さんは既に結婚式の場所も決めていて、衣装レンタルはフルール・マリエにて担当することになっているらしい。
「朝見さん、お願いします」
真田さんに指名されて、はい、と頷き、牧さんにもよろしくね、と声をかけた。
そして、今日が牧さんとその新郎が来店する初日だった。
牧さんからの話によると、クリスマスの日にプロポーズをしてもらった元彼とよりを戻し、自分の誕生日に入籍をしたらしい。
来店した新郎は色白で顔のパーツがあまり強く主張しないものの、まとまりが良くシャープな印象のある男の人だった。
牧さんが言う安定感を感じさせる、好印象の新郎だった。