フルール・マリエ
キッチンを片付けた後に電気を消して、ロウソクに火をつけたケーキを出してくると、また千紘は感動した様子だった。
「誕生日おめてとう」
千紘が火を吹き消すのを見守って拍手すると、千紘がありがとう、とキスをして微笑んだ。
ホールのケーキを切ってお皿に取り分けて千紘の前に置き、自分の鞄からネイビーの箱を取り出して千紘に渡した。
「え、俺に?」
頷くと、腕ごと引かれて千紘の横に座らせられる。
「開けるね?」
ぴったりと肩がくっついた状態で箱を開けて、中の物を取り出す。
「キーケースだ」
皮のキーケースを眺めた千紘は、ありがとう、とキーケースを開いたり触れたりしていた。
「ケーキも食べてね」
私の分のケーキを手に取ると、千紘は口を広げて待っていた。
子供みたいだなぁ、と小さく笑ってケーキをフォークで切り分け、千紘の口に運ぶと満足そうに食べていた。
千紘も自分のケーキを手にすると、今度は私にケーキを乗せたフォークを口元に持って来たので、口に入れる。
とても甘い、チョコレートとイチゴの甘酸っぱさが口の中に広がった。