フルール・マリエ


1人で来店された三原様は不安そうに私に会釈をしたので、その不安を取り払うべく、「三原様、お待ちしておりました」と心の底から微笑みかけた。

打ち合わせスペースで、まずは飲み物を出して写真を見ながら話を進める事にした。

「帰られてから、またお話し合いはされました?」

新婦のドレスに新郎も同様に悩んでいて、相談にもしっかりのってくれる。

店では話しにくいことも、2人きりであれば本音で話せるし、話をまとめてきてくれたりもするので、帰ってから話し合ったことを聞くのはとても重要だ。

しかし、三原様はグラスの外側についた水滴を指で取るだけで、返答がない。

「三原様?」

もう一度声をかけると、意を決したような目でこちらを見つめ、ひき結んでいた口を開くと、とんでもない言葉が飛び出した。

「結婚式、やめます」


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