フルール・マリエ


思ってもみない言葉が出たせいで、頭の処理能力がとてつもなく遅い。

「今まで時間を割いて下さった朝見さんには本当に申し訳ないんですけど」

「し、新郎様とお話し合いはされたんですか?」

「昨日しましたけど埒があかなくて、とりあえず仕事から帰ってきたら話そうってことになりました。でも、こんな状態で結婚式なんて出来ないし、そろそろいろんな締め切りが近いから、引き延ばすのも迷惑だと思って」

きっととても言いにくいことを正直に言ってくれている。

早く終わらせたいと思っているのか、いつもよりも早口で話をされるので、鈍足な処理能力ではすぐに言葉が出てこない。

「ごめんなさい。ドレスを悩んでいたのは本当だけど、途中から引き伸ばそうって思ってました。そしたら、決断を引き伸ばせるって思って。でも、朝見さんにもプランナーさんにも迷惑をかけるんだってことを実感してきて、もうちゃんと決断しなきゃって思ったんです」

ナイーブな時期に突発的に喧嘩をして弱気になってしまう新郎新婦もいるけれど、三原様の場合はいつからか、ずっと結婚式に対して不安な思いでいたことに愕然とした。

自分がそれに気づかなかったことに大きなショックを受けた。


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