フルール・マリエ
「三原様。私からお願いがあります」
三原様は潤んだ瞳でゆっくりと瞬きをし、首を傾げる。
「一着だけ、三原様に着て頂きたいドレスがあります」
試着室のドアを開け、壁にかかっている一着のドレスを三原様にお見せした。
「わぁ・・・」
三原様は沈鬱な表情を緩めて、ただ目の前のドレスに目を奪われ見惚れていた。
カタログで見た新作のドレスを取り寄せられないか真田さんに連絡を取ってもらったが交渉は難航したようだった。
しかし、やっとのことで昨日のうちにこのドレスが間に合った。
「三原様が黄色やオレンジが好きなのは、向日葵がお好きだからなんですよね?だから、プロポーズの場所も向日葵畑の前で」
「それ・・・、覚えててくれてたんですね」
「ええ。とても素敵なシチュエーションだなぁ、と思いました。新婦様が向日葵を好きな事、プロポーズの前に知ったから秋でも咲いてる向日葵畑を大急ぎで探したって」
「そうです。向日葵のミニブーケと一緒に」
「このドレスを見つけた時、三原様に着て頂きたいと思いました。どうか、私のお願いを聞いて頂けませんか?」
三原様はドレスを見つめたまま、小さい声ではい、とおっしゃってくれた。