フルール・マリエ
数日後に三原様から来店予約の電話があり来店日を決定し、契約終了の手続きを進めるために、本日来店された。
入り口で三原様ご夫婦を出迎えると、まずは2人が深々と頭を下げた。
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
慌てて私が頭を上げてもらうよう伝えると、ご夫婦はバツが悪そうな顔を揃えて、向き直った。
ひとまず席に案内すると、新婦の方が言いにくそうに口を開いた。
「あの、騒いでおいてお恥ずかしいのですが、予定通り結婚をすることにしました」
苦笑を浮かべた新婦が混乱している私の顔を見て、先を促すように新郎に視線を送る。
「向日葵のドレス、写真で見ました。これだ、って思いました。けれどその後、彼女から本心を聞いて、説得しようとしましたが決意は固くてどうしたらいいのかと悩んでいました」
「そうしたら、数日後に突然彼は北海道行きのチケットを買ってきて、帰ろうって。北海道での就職先も面接の予定を入れたって言い出して」
失敗を明かすように言葉を細かく切って話す新婦は、申し訳ないと思いつつも、どこか嬉しそうに見えた。
「不甲斐ない話ですが、彼女の不安な気持ちを少しもわかってやれませんでした。だから、もう一度チャンスをもらいました。今度はちゃんと本心を言い合って2人で暮らそうって」
「2回目のプロポーズ、ですね」
つい呟いた言葉に2人は顔を見合わせて、照れ臭そうに微笑した。