フルール・マリエ
「だから、その、結婚式もこのまま行いたいんです」
新婦は俯き加減で申し訳なさそうに呟く。
新郎新婦の様子から結婚式を通常通り執り行うかまでは読み取れなかったのだが、新婦の言葉に目の奥が熱くなった。
「もちろんです。是非、お手伝いさせてください」
感極まって、大きな声が出てしまったものの、新婦は顔をパッと上げて嬉しそうに頷いた。
「あと、ドレスは向日葵のドレスでお願いしたいんですけど・・・」
「ええ。もちろんです」
新婦は新郎と顔を見合わせて、微笑み合った。
「書類を揃えて参りますね」
私の目の前にはキャンセルに向けた書類だけが広げてあったので、それを搔き集めると胸に抱えて事務所に引き返した。
事務所に入ると、ちょうど顔を上げた真田さんと目が合った。
「その顔は、上手くいったんですね」
「はい。結婚式を挙げられるそうです」
「そうか。良かったです」
「真田さんがあのドレスを手配してくれたからです。ありがとうございました」
「目をつけたのは君ですよ。良くやってくれました」
微かに笑みを浮かべた真田さんは再びパソコン画面に目を移して仕事をし始めた。
面と向かって良くやった、などと言われるとくすぐったくて、私は喜びを心に秘めながら書類を集めて三原様のもとに急いで戻ることにした。